
株式会社藤木工務店
17,000件超のISO文書を移行し、Notesから脱却
ERPパッケージとの連携で電帳法にも対応、文書集約を加速
大阪市中央区に本社を置く総合建設会社、株式会社藤木工務店(以下、藤木工務店)は、老朽化に伴う運用課題を抱えていたHCLNotes/Domino(以下Notes)の刷新に向け、楽々Document Plusを導入した。従来、Notes上で管理していた17,000件を超えるISO文書を楽々Document Plusに移行し、建設業・工事業向けERPパッケージ「ガリバーシリーズ*1」と連携させることで、改正電子帳簿保存法(以下、電帳法)にも対応。この取り組みは、Notesからの脱却を後押ししただけでなく、文書の集約によって社内のナレッジ活用も促進する転機となった。今後は、CADデータの一元管理も視野に入れ、楽々Document Plusを全社共有の文書管理基盤として活用していく方針だ。

目次
Notesの老朽化により新システムへの移行を模索。
技術力の維持向上を図るため文書管理の刷新が急務に
1920(大正9)年の創業以来、100年以上にわたり、国内の建築物を数多く手がけてきた藤木工務店。創業第一作となる「日本銀行岡山支店」を皮切りに、銀行、医療施設、宗教施設など多様な建築物の設計・施工を担ってきた。文化財の修復・保存にも強みを持ち、備中国分寺五重塔やヨドコウ迎賓館(旧山邑家住宅)など重要文化財の工事にも豊富な実績を有している。長年にわたり蓄積してきた技術とノウハウこそが、藤木工務店の競争力を支えている。同社では、先進技術の継続的な習得に取り組むとともに、過去の工事記録をテキスト化して保管するなど、技術継承と維持向上のための仕組みづくりにも力を入れてきた。
当然のことながら、それを支える文書管理体制の整備は不可欠だ。しかし、同社では、文書管理に関して少なからぬ課題を抱えていた。当時の状況について、本社管理部システム課担当課長の重谷直慶氏は次のように振り返る。
「従来、当社ではNotesを利用していましたが、長年の運用で老朽化が進み、文書管理にもさまざまな制約が生じていました。とくにISO文書の管理には課題が多く、Notes上で、17,000件もの手順書や記録を扱っていたことから、年に一度の文書更改のたびに、それぞれの文書を個別に更改し、改訂版を従業員に送る必要がありました。また、データが大きく動作が遅くなるなどの理由から、AutoCADやJw_cadなどのCADファイルを保管できず、各自で個別に管理していました。過去の工事内容などを記録した技術文書についてもCADファイルと同様の理由でNotesに保管できなかったため、変更のたびに拠点ごとに改訂版を配付していたのです。結果として、情報共有にかかる負荷が非常に大きくなっていました」(重谷氏)。
文書管理に関するこうした課題が蓄積するなか、現状を打開する転機が訪れた。Notesの刷新が正式に決定し、段階的に各種機能を新システムへ移行する方針が示されたのである。これに伴い、Notesで運用されていた申請業務は自社開発した新たなシステムに移行。同時に文書管理体制の再構築に向けた取り組みも本格化することになった。
CADファイル保管やタイムスタンプの機能を評価。
パッケージとも連携し、電帳法対応を実現
文書管理体制の刷新にあたり、藤木工務店では複数の文書管理システムを比較・検討した。なかでも重視していたのが、「CADファイルの管理」への対応である。従来のNotesでは対応できなかった図面管理を、新たなシステムでは実現したいと考えていた。加えて、電帳法への対応も大きなテーマとなっていた。当時は、電帳法による電子取引データの保存義務化を控えており、経理伝票などの保管体制の見直しが急務となっていた。文書管理システムを刷新するこの機会に、関連業務を集約したいという狙いもあった。
こうした要件を踏まえ、藤木工務店が選定したのが楽々Document Plusである。楽々Document Plusは拡張機能として「CADオプション」を提供しており、AutoCADやJw_cadの図面ファイルを保存・ビューワ表示ができるだけでなく、図面内のテキストも含めて全文検索の対象とすることも可能だ。これにより、図面管理の標準化と効率化が見込まれた。さらに、タイムスタンプの付与など、電帳法対応に必要な機能が一通り揃っている。複数の製品を比較するなかで、これらの条件をすべて満たしていたのは楽々Document Plusのみであり、導入の意思決定は非常にスムーズだった。
こうして楽々Document Plusの採用を決定した藤木工務店は、Notesからの移行作業に着手した。まずは、Notes上で管理していたISO文書の移行を進めると同時に、電帳法への対応に向けた仕組みづくりにも取り組んだ。その取り組みについて、本社管理部システム課の絞谷紀由朗氏は次のように説明する。
「ISO文書については、Notes上で管理していた文書の件数が非常に多く、移行には一定の手間がかかりました。ただ、楽々Document PlusはUIが分かりやすく、文書登録フォームも既存の設定をコピーして作成できるなど、現場の使い勝手に配慮された工夫が多く、結果として工数を抑えて導入できたと感じています。また、電帳法対応についても、楽々Document Plusの強みが活かされました。文書の自動登録機能が用意されており、当社が利用しているERPパッケージとも連携可能で、経理伝票などを含む電子データの処理や保存体制を円滑に構築できました」(絞谷氏)。
従来、藤木工務店は建設業・工事業向けERPパッケージ「ガリバーシリーズ」に経理伝票などの電子データを登録し、ファイルサーバとバッチ連携して経理系文書を管理していた。今回、この体制を見直し、楽々Document Plusに経理系文書が自動連携される仕組みを整備。楽々Document Plusに連携された電子データにはタイムスタンプが自動的に付与されるため、電帳法の要件を確実に満たせるようになった。これらの取り組みにより、藤木工務店は文書管理体制が抱えていた問題を段階的に克服し、実効性ある運用体制へと進化を遂げた。

情報共有の「壁」を打破。
レガシーシステムを脱却し、新たな時代の業務基盤を確立
現在、藤木工務店はNotes上で管理していた17,000件超のISO文書などをすべて楽々Document Plusに移行し、新たな文書管理体制を確立している。従来は保管が難しかった技術文書も一元的に管理できるようになり、情報共有の円滑化を通じて、過去の工事記録や技術文書を全社で活用しやすくなった。その状況について、絞谷氏は次のように語る。
「何よりもまず、情報共有にかかる手間が大幅に削減されました。以前はNotesでの管理だったため、文書を共有する際には、一度ダウンロードしてメールで送付したり、Notesの保管フォルダを相手に伝えたりといった対応が必要でした。その点、楽々Document PlusはWebシステムですので、URLを共有するだけで済みます。また、全文検索機能も有していることから、文書の検索も非常に効率化されています。とくに、あいまいなフレーズでも該当する文書が表示される「あいまい検索」はとても便利です。私も業務のなかで過去の文書を閲覧する機会が多いため、日常的に助けられています。さらに、版管理機能も備わっており、旧版の管理や改訂履歴の記録が自動化できる点も、ISO文書の管理に重宝しています」(絞谷氏)。
絞谷氏は「今回の導入を通じて、最新の情報をすばやく検索でき、すばやく共有できる体制が築かれました」と語る。文書管理体制の刷新により、情報共有を妨げていた「壁」が取り払われ、組織内に蓄積された知識を誰もが有効に活用できる環境が整備された。さらに、楽々Document Plusの導入を契機として、藤木工務店はNotesからの移行を加速。現在ではほぼすべての機能の移行を終え、近く完全廃止を見込んでいる。楽々Document Plusは、レガシーシステムからの脱却という点でも重要な役割を果たした。
CADファイルを集約し、図面管理を一元化。
プロジェクト情報の共有・活用を見据えた基盤づくりへ
今後、藤木工務店は、CADファイルの楽々Document Plusへの移行を本格化させ、図面管理の一元化を図る方針である。その展望を重谷氏は次のように語る。「現状では、図面を確認するたびに、それぞれの従業員がCADソフトを立ち上げてファイルを開かなくてはいけません。その点、楽々Document Plusなら、ビューワ上で図面を閲覧できるため、ソフトを立ち上げる無駄な時間や手間が不要になります。さらに今後は図面を含めたプロジェクトごとの成果物を楽々Document Plusで管理していきたいと考えています。そうすれば、過去の工事内容を従業員が即座に把握でき、組織内に蓄積された知識をより有効活用できるようになるでしょう」(重谷氏)。
100年を超える歴史のなかで培われた藤木工務店の技術力。その価値を現代業務にいかし、次世代へ継承していくために、楽々Document Plusが果たす役割はますます大きくなっている。
*1:ガリバーシリーズは、あさかわシステムズが開発した、建設業・工事業向けの統合型工事ソリューション。
建設工事業の業務フローに沿って案件の発生から工事完成までに生じる業務を一元管理し、業務効率化を支援する。

本社管理部 システム課 担当課長 重谷 直慶 氏
本社管理部 システム課 絞谷 紀由朗 氏