レガシー刷新とは?主な手法や進め方、成功のポイントを解説
レガシー刷新とは、老朽化・複雑化したシステムを見直し、現在の業務や将来の事業環境に対応できるシステムへ移行する取り組みです。
単に古いハードウェアやプログラムを新しくするだけでなく、業務やデータ、システム構造を整理し、保守性や拡張性を高めることも重要になります。
レガシーシステムを使い続けると、保守を担う人材の不足や維持コストの増加、ブラックボックス化、外部サービスとの連携の難しさなどが生じる可能性があります。
一方で、十分な現状調査や目的の整理をせずに刷新を進めると、必要以上に規模が大きくなったり、現行システムの問題を新しいシステムへ引き継いだりするおそれがあります。
本コラムでは、レガシー刷新の意味や主な手法、刷新前に整理すべきこと、具体的な進め方、成功させるためのポイントを解説します。
あわせて、刷新後も長期間にわたって保守・改善しやすいシステムを構築するための、開発基盤の選び方も紹介します。
目次
第1章 レガシー刷新とは
レガシーシステムとは、導入から長い年月が経過したシステムを指すだけではありません。
改修や保守が難しく、仕様を把握している人が限られているほか、新しい技術やサービスとも連携しにくいなど、企業の業務や事業の変化に対応しづらくなったシステムを指します。
システムがレガシー化する主な原因には、長年にわたる機能追加や個別改修による構造の複雑化、仕様書や設計書の更新不足、担当者の異動・退職による知識の属人化、使用している技術や製品の老朽化などがあります。
レガシー刷新とは、こうした課題を抱えたシステムを見直し、現在の業務や将来の事業環境に対応できるシステムへ移行する取り組みです。
単に古いハードウェアやプログラムを新しくするだけでなく、業務内容やデータ構造、システム間の連携、保守の方法まで整理し直すことが重要です。
レガシー刷新に関連する言葉として、モダナイゼーションがあります。レガシー刷新がシステムの課題を解消する取り組み全体を指すのに対し、モダナイゼーションは、クラウド移行やWeb化、再構築などによって技術やシステム構成を現代化するアプローチです。
レガシー刷新の目的は、古いシステムを置き換えること自体ではありません。
業務の変化に対応しやすく、長期にわたって保守・改善できる状態へ見直すことが、本来の目的です。
第2章 レガシーシステムを使い続けるリスク
レガシーシステムは、古いという理由だけで直ちに刷新が必要になるわけではありません。
しかし、長年の改修による複雑化や技術の老朽化が進み、保守や改修が難しくなると、システム部門だけでなく、業務や事業にも影響が及ぶようになります。
ここでは、レガシーシステムを使い続けることで生じる主なリスクを解説します。
改修に時間がかかり、業務の変化に対応しにくくなる
長期間利用されているシステムでは、機能追加や制度変更への対応を繰り返すことで、プログラムやデータの関係が複雑になっていることがあります。
システムの構造が複雑になると、一つの機能を変更するだけでも、関連するプログラムやデータへの影響を広く調査する必要があります。そのため、小さな改修であっても調査やテストに時間がかかり、変更しにくい状態になっていきます。
その結果、現場からの改善要望への対応が遅れたり、新しい商品・サービスや制度変更に合わせたシステム改修を迅速に行えなかったりするなど、業務や事業の変化への対応力が低下する可能性があります。
ブラックボックス化により、安定した保守・改修が難しくなる
長年にわたって改修を重ねたシステムでは、現在の実装内容と仕様書が一致していなかったり、変更の理由や経緯が十分に残されていなかったりすることがあります。
その状態で当時の開発担当者が異動・退職すると、システムの仕様や処理内容を把握している人が限られ、調査や障害対応、改修判断が特定の担当者に集中しやすくなります。
こうしたブラックボックス化が進むと、担当者の不在によって改修や障害対応が滞るだけでなく、「影響範囲が分からないため変更できない」という状態にもつながります。結果として、必要な改善を安全かつ継続的に行うことが難しくなります。
保守できる人材が減り、コストや対応負担が増える
古いプログラミング言語やOS、ミドルウェア、ハードウェアなどを利用しているシステムでは、それらの技術を扱える技術者が徐々に減少していきます。
対応できる社内人材やベンダーが限られると、保守作業を一部の技術者に依存しやすくなり、人材の確保や技術継承も難しくなります。また、対応できる事業者が少なくなることで、保守費用が高くなったり、障害対応や改修に時間がかかったりする可能性もあります。
その結果、システムを維持するための負担が増え、本来取り組むべき業務改善や新しいシステムへの投資に、人材や予算を振り向けにくくなることがあります。
製品の老朽化により、障害やセキュリティのリスクが高まる
長期間利用しているシステムでは、OSやミドルウェア、ハードウェアなどがメーカーのサポート終了を迎えることがあります。
サポートが終了すると、不具合修正やセキュリティ更新を受けられなくなったり、故障したハードウェアの部品を確保しにくくなったりするなど、現在の環境を維持すること自体が難しくなります。
こうした状態で障害が発生すると、復旧までに時間がかかる可能性があります。また、既知の脆弱性へ十分に対応できないなど、セキュリティ面のリスクも高まります。
基幹業務を担うシステムの場合には、業務停止など事業継続への影響も考慮する必要があります。
外部システムとの連携やデータ活用が難しくなる
古いシステムでは、現在一般的に利用されているAPIなどの連携方式に対応していなかったり、独自のデータ形式を使用していたりすることがあります。
そのため、新しいクラウドサービスや周辺システムと連携する際に、個別の連携プログラムを開発する必要が生じたり、システム間でデータを受け渡すために手入力やファイル連携を続けなければならなかったりするケースが見受けられます。
結果として、社内に蓄積されたデータを横断的に活用しにくくなり、業務の自動化やデータ活用、新しいサービスの導入などを進めるうえでの制約になる可能性があります。
このように、レガシーシステムを使い続けることによる影響は、システム部門の保守負担だけにとどまりません。業務改善の遅れ、維持コストの増加、障害やセキュリティのリスク、新しい事業やサービスへの対応力低下など、企業活動全体に影響を及ぼすことも懸念されます。
そのため、問題が深刻になってから対応するのではなく、現在のシステムが抱える課題と将来的な影響を整理し、必要に応じて適切な時期に刷新を検討することが重要です。
第3章 レガシー刷新の主な手法と選び方
レガシー刷新には、既存システムをできる限り残して稼働環境だけを移行する方法から、業務やシステム構造を見直して新しく構築する方法まで、複数の選択肢があります。
どの方法が適しているかは、現行システムが抱える課題や刷新の目的によって異なります。すべてを同じ方法で刷新するのではなく、システムや機能ごとに複数の手法を組み合わせることもあります。
レガシー刷新の主な手法
| 手法 | 概要 | 主なメリット | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| リホスト | アプリケーションの仕組みを大きく変えず、稼働環境を新しいサーバーやクラウドへ移す | 比較的短期間で移行しやすく、既存資産を多く残せる | プログラムの複雑さや保守性の問題は、そのまま残る可能性がある |
| リプラットフォーム | OS、データベース、ミドルウェアなどを変更し、新しい基盤へ移行する | アプリケーションを大きく作り直さず、基盤の老朽化に対応できる | 移行先との互換性確認や、一部プログラムの修正が必要になる |
| リファクタリング | 既存の機能を大きく変えず、プログラムの内部構造を見直し、保守・改修しやすい状態へ改善する | 処理を理解しやすくし、保守性や改修のしやすさを高められる | 業務や機能自体の見直しにはつながりにくい |
| リライト | 既存の機能や仕様を参考にしながら、新しい言語や技術でプログラムを書き直す | 古い技術から移行し、保守人材や技術面の課題を解消しやすい | 現行仕様をそのまま再現すると、不要な機能や複雑さまで引き継ぐ可能性がある |
| リビルド | 業務、データ構造、システム構成を見直し、新しいシステムとして再構築する | 現行システムの課題を根本から見直し、将来の拡張や改善に対応しやすい | 対象範囲が広くなりやすく、十分な現状調査や業務整理が必要になる |
| パッケージ・ERPへの移行 | 現行システムを、既製のパッケージ製品やERPへ置き換える | 標準的な業務機能や製品サポートを利用できる | 自社の業務を製品の標準機能に合わせる必要があり、過度なカスタマイズは保守負担につながる |
それぞれの手法には、適する課題と適さない課題があります。
例えば、ハードウェアの保守終了へ早急に対応することが目的であれば、リホストやリプラットフォームが選択肢になります。
一方、プログラムの複雑化や業務との不一致まで解消したい場合は、リライトやリビルドなど、アプリケーション自体を見直す方法が適しています。
レガシー刷新の手法を選ぶポイント
刷新手法を選ぶ際は、現在の技術だけでなく、業務や将来の運用も含めて判断する必要があります。
現行システムの課題を明確にする
まず、何を解決するために刷新するのかを明確にします。
主な課題がハードウェアやOSの老朽化であれば、稼働環境の移行で対応できる可能性があります。
一方、業務に合わない機能、複雑なプログラム、属人化した保守などが問題であれば、システムの内部や業務そのものの見直しが必要です。
業務をどこまで見直すかを決める
現行業務を維持したまま技術だけを新しくするのか、業務手順や役割分担も含めて見直すのかによって、適した手法は異なります。
現行システムの機能をそのまま移行するだけでは、非効率な業務や不要な機能まで新しいシステムへ引き継いでしまう可能性があります。刷新を機に、業務上必要な機能と見直すべき機能を整理することが重要です。
既存資産をどこまで残すかを判断する
現行システムには、プログラムだけでなく、データベース、業務ルール、帳票、外部システムとの連携など、多くの資産が存在しています。
すべてを作り直すのではなく、今後も利用できる資産と、見直すべき資産を分けて判断します。既存データベースを活用しながら、画面やアプリケーションを再構築する方法もあります。
期間・予算と移行リスクを考慮する
刷新範囲が広いほど、必要な期間や費用、業務への影響も大きくなります。
一度にすべてを切り替えるのが難しい場合は、業務や機能の重要度に応じて優先順位を付け、段階的に刷新する方法を検討します。新旧システムを並行して利用する期間や、移行中のデータ連携についても考える必要があります。
将来の拡張性と保守性を考える
刷新時の負担を抑えることだけでなく、新しいシステムを長期間にわたって保守・改善できるかも重要です。
短期間で移行できても、複雑な構造や属人化が残れば、再びシステムがレガシー化する可能性があります。業務変更への対応、外部システムとの連携、設計情報の維持、改修時の影響把握なども含めて、刷新方法を選ぶことが大切です。
レガシー刷新では、一つの手法に統一する必要はありません。例えば、継続利用できるシステムはリホストし、課題の大きい業務はリビルドするなど、システムや機能ごとに方法を使い分けることも有効です。
楽々Framework3は、現行システムの業務仕様や既存データを生かしながら、新しいWebシステムとして作り直すリライトと、業務やデータ構造から見直して再構築するリビルドを支援します。
現行資産をどこまで残すか、業務をどこまで見直すかに応じて、システムや機能ごとに適した方法を選択できます。
楽々Framework3を活用した具体的な再構築については、開発シーン「モダナイゼーション」で紹介します。
第4章 レガシー刷新を始める前に整理すべきこと
レガシー刷新では、すぐに新しいシステムの設計や製品選定を始めるのではなく、まず何を目的に刷新するのか、現在のシステムや業務がどのような状態なのか、どこまでを刷新対象とするのかを整理することが重要です。
こうした事前整理を行うことで、現行システムに必要以上に引きずられることなく、課題や将来像に合った刷新方法を検討しやすくなります。
刷新の目的と目指す姿を明確にする
まず、なぜレガシー刷新を行うのかを明確にします。
例えば、
- ハードウェアやソフトウェアの老朽化に対応したい
- 古い技術への依存や保守人材不足を解消したい
- システムの複雑化・属人化を改善したい
- 外部システムとの連携やデータ活用を進めたい
- 業務変更や新しい事業へ対応しやすくしたい
など、企業によって刷新が必要となる背景は異なります。
あわせて、刷新後にどのような状態を実現したいのかも整理します。
例えば、単に現在と同じ機能を新しい環境へ移すのか、業務やデータ構造も見直して変更しやすいシステムへ再構築するのかによって、適した刷新方法は変わります。
「何から移行するか」だけでなく、「刷新によって何を実現したいか」を明確にすることが、刷新手法や対象範囲を判断するための出発点になります。
現行システムの構成と利用状況を把握する
次に、現行システムがどのような構成で動いているのかを整理します。
主な確認対象には、次のようなものがあります。
- ハードウェア
- OS・ミドルウェア
- プログラム
- 画面・帳票・バッチ
- データベース
- 外部システムとの連携
- 利用している部門や利用者
- システムや機能の利用状況
- 業務上の重要度
例えば、リホストやリプラットフォームを行う場合でも、現在利用しているハードウェアやソフトウェア、外部システムとの接続関係などを把握していなければ、移行先で現在のシステムを問題なく稼働できるか判断できません。
また、システム間の連携関係や業務上の重要度を整理しておくことで、どのシステムから刷新する必要があるのかも判断しやすくなります。
長期間運用されてきたシステムでは、仕様書と実際のシステムが一致していないこともあります。そのため、ドキュメントだけでなく、実際のプログラムやデータ、利用状況も確認しながら現状を把握することが重要です。
現行業務と機能の必要性を見直す
リライトやリビルドによってアプリケーションを作り直す場合は、システム構成だけでなく、現在の業務や機能の必要性まで整理します。
長期間利用されてきたシステムには、現在は使われていない機能や、過去の業務に合わせて追加された処理、同じような機能が複数存在していることがあります。
これらをすべてそのまま新しいシステムへ移行すると、刷新後も現在と同じ複雑さや保守上の課題を抱えてしまうことも懸念されます。
そのため、現行の業務や機能を棚卸しし、
- そのまま残すもの
- 内容を見直して残すもの
- 統合するもの
- 廃止するもの
- 新たに追加するもの
- 再利用するデータやシステム資産
に整理します。
「現行システムにあるから残す」のではなく、現在の業務や将来の運用に本当に必要かという視点で判断することが重要です。
また、データについても、どのデータを今後も利用するのか、不要なデータや重複したデータがないかなど、移行計画を立てるための現状を把握しておきます。
刷新対象と優先順位を決める
目的や現行システムの状況、業務・機能を整理したら、どこまでを今回の刷新対象とするのかを決めます。
大規模な基幹システムでは、関連するすべてのシステムや業務を一度に刷新しようとすると、対象範囲が広がり、期間や費用、業務への影響も大きくなります。
そのため、
- 製品・サービスのサポート終了時期
- システムの老朽化状況
- 業務上の重要度
- 障害発生時の影響
- 改修頻度や改善要望
- 他システムとの依存関係
などを踏まえて、刷新対象と優先順位を整理します。
例えば、サポート終了が迫っているシステムや、保守・改修上の課題が大きいシステムを優先対象とし、継続利用できる部分は残すといった判断も考えられます。
ここまで整理することで、「何を、なぜ刷新するのか」が明確になり、次のステップで刷新方法や具体的な移行計画を検討できるようになります。
第5章 レガシー刷新の進め方
レガシー刷新の具体的な進め方は、対象となるシステムや採用する刷新手法によって異なります。
第4章で整理した目的、現行システムの状況、刷新対象をもとに、刷新手法を決定し、新しいシステムの設計・開発、データ移行、切り替えへと進めていきます。
ここでは、レガシー刷新の基本的な流れを解説します。
1.刷新手法と全体計画を決める
まず、整理した課題や刷新対象に応じて、どの刷新手法を採用するかを決めます。
例えば、現在のアプリケーションをできる限り変更せず稼働環境を移すのであればリホスト、基盤やミドルウェアを変更するのであればリプラットフォーム、現在の業務仕様を生かしながら新しい技術で再開発するのであればリライト、業務やシステム構造から見直すのであればリビルドなどが選択肢になります。
一つのシステム全体を同じ手法で刷新する必要はありません。継続利用できるシステムは既存資産を残し、保守上の課題が大きいアプリケーションだけをリライトするなど、システムや機能ごとに方法を組み合わせることもできます。
採用する手法が決まったら、対象範囲や移行順序、スケジュール、既存システムとの連携方法などを整理し、全体の刷新計画を具体化します。
2.新しいシステムを設計・構築する
リライトやリビルドを行う場合は、第4章で整理した業務や機能をもとに、新しいシステムを設計・構築します。
リライトでは、現在の業務仕様や必要な機能を生かしながら、新しい技術や開発基盤を使ってアプリケーションを再構築します。
一方、リビルドでは、現在のシステムをそのまま再現するのではなく、業務プロセスや機能、データ構造なども見直したうえで新しいシステムを設計します。
設計後は、画面や処理、データベース、外部システムとの連携などを構築し、単体テストや結合テスト、業務テストを通じて、新しいシステムが想定した業務を実現できるか確認します。
リホストやリプラットフォームの場合は、新しい稼働環境を構築し、現行アプリケーションやデータを移行したうえで、移行先でも正しく動作するかを確認することが中心となります。
3.一括刷新か段階刷新かを決める
刷新範囲が広い場合は、すべての対象を一度に切り替える「一括刷新」と、対象を分けて順番に切り替える「段階刷新」のどちらで進めるかを検討します。
一括刷新は、短期間で新しい環境へ移行できる一方、対象範囲が広いほど、切り替え時の業務への影響や、問題が発生した場合の影響も大きくなります。
一方で段階刷新は、業務、機能、部門、システムなどの単位で対象を分け、優先順位に沿って順番に移行します。例えば、サポート終了が迫っているシステムを先に移行し、業務やデータ構造の見直しが必要な領域は、その後段階的に再構築するといった進め方があります。
段階刷新では、新旧システムを一定期間併用する場合があるため、移行期間中に新旧システム間でどのようにデータを連携するのか、どの時点で処理を新システムへ切り替えるのかなども計画しておくことが必要です。
4.データ移行を計画・実施する
レガシー刷新では、アプリケーションだけでなく、これまで蓄積してきたデータを新しいシステムへ正しく引き継ぐ必要があります。
まず、第4章で整理したデータをもとに、
- 移行するデータ
- 移行しないデータ
- 別の場所で保管するデータ
を決めます。
そのうえで、重複や欠損、表記のばらつきなどを確認し、必要に応じてデータを整理します。
特にリビルドなどでデータ構造を変更する場合は、現行システムの項目が新しいデータ構造のどこに対応するのかを整理し、変換方法を決めておきます。
本番移行の前には、実際のデータを使って移行テストやリハーサルを行い、
- 想定した時間内に移行できるか
- 件数や値に問題がないか
- 新しいシステムで正しく参照・更新できるか
などを確認します。
5.新システムへ切り替える
設計・開発・テストとデータ移行の準備が完了したら、新しいシステムへ切り替えます。
切り替え時には、旧システムを停止するタイミング、最終データの移行、新システムの稼働確認、利用者への案内など、必要な作業を事前に整理しておきます。
特に基幹システムでは、切り替え時のトラブルが業務全体に影響する可能性があります。そのため、本番切り替え前に手順を確認し、問題が発生した場合に旧システムへ戻すための切り戻し方法も準備します。
新システムの稼働を確認し、業務を問題なく継続できる状態になれば、システム刷新としての移行工程は完了です。
ただし、レガシー刷新は新しいシステムへ切り替えれば終わりではありません。
刷新後のシステムを再び複雑化・属人化させないためには、どのように保守・改善していくかまで考えておく必要があります。
次章では、刷新後も長期的にシステムを維持・改善していくために重要なポイントを解説します。
第6章 レガシー刷新を成功させるポイント
レガシー刷新では、新しいシステムへ移行することだけでなく、刷新後に再びシステムが複雑化・属人化しないようにすることが重要です。
せっかくシステムを刷新しても、現行システムの複雑な構造をそのまま引き継いだり、担当者ごとに異なる方法で改修を重ねたりすると、時間の経過とともに再び保守・変更しにくいシステムになることも懸念されます。
そのため、刷新時には新しいシステムを構築するだけでなく、今後も長期的に保守・改善しやすい状態をどのようにつくるかまで考えておく必要があります。
現行システムをそのまま再現しない
リライトやリビルドによってシステムを再構築する場合、現在の画面や機能をそのまま新しい技術で作り直すだけでは、既存システムが抱えている複雑さや非効率な業務まで引き継いでしまう可能性があります。
長期間利用されてきたシステムには、過去の業務や制度に合わせて追加された機能、現在は使われていない処理、似たような機能やデータなどが残っていることがあるためです。
そのため、第4章で整理した業務や機能をもとに、
- 現在も必要な機能か
- 業務そのものを見直せないか
- 重複している機能を統合できないか
- データ構造を整理できないか
- 今後の変更や外部システムとの連携を考慮できているか
といった視点で、新しいシステムの構造を検討することが重要です。
「現在のシステムを新しい環境で再現する」のではなく、現在の業務と将来の変更を踏まえて、保守・改善しやすいシステムへ見直すことが、再レガシー化を防ぐ第一歩になります。
仕様・設計情報と開発方法を標準化する
刷新直後はシステムの仕様や構造を把握できていても、長年にわたって改修を重ねる中で、仕様書と実際のシステムが一致しなくなったり、変更内容が担当者の知識だけに残ったりすると、再びブラックボックス化する可能性があります。
そのため、画面や処理の作り方、命名規則、共通部品の利用方法など、開発時の基本的なルールを定め、担当者ごとの実装方法の違いを抑えることが重要です。
あわせて、仕様書や設計情報、変更内容などを継続的に更新し、現在のシステムの状態を複数の担当者が確認できるようにします。
また、システムを変更する際には、対象となる項目やデータがどのプログラムや機能で利用されているかなど、変更による影響範囲を確認できる仕組みを整えておくことも大切です。
こうした開発方法や仕様情報を組織で共有できる状態にしておくことで、特定の担当者の経験や記憶だけに頼らず、担当者が変わっても保守・改修を続けやすくなります。
刷新後の保守・改善まで見据える
レガシー刷新は、新しいシステムが稼働すれば完了するものではありません。
稼働後も、法制度の変更、組織変更、業務改善、新しいサービスとの連携などに応じて、システムには継続的な変更が発生します。
そのため、刷新時から、
- 稼働状況や障害をどのように把握するか
- 改修時に仕様や影響範囲をどのように確認するか
- 誰が保守・改善を担当するか
- システムに関する知識をどのように引き継ぐか
- 開発基盤や技術を長期的に利用できるか
といった、稼働後の運用・保守体制まで考えておく必要があります。
特に、システムを長期間利用する場合は、アプリケーションだけでなく、開発基盤そのものを継続して利用できるかという視点も欠かせません。開発基盤のサポート終了や技術環境の変化によって再び大規模な移行が必要になれば、新たな刷新負担につながる可能性があります。
また、刷新後のシステムを自社主体で継続的に改善していく場合は、開発や保守のすべてを自社で担う必要はありません。自社と外部ベンダーの役割を整理しながら、システムの目的や仕様を自社側でも把握し、改善判断の主体を持てる体制をつくることが重要です。
レガシー刷新を一度きりのシステム更改で終わらせず、刷新後も変更しやすく、担当者が変わっても継続して保守・改善できる状態をつくることが、長期的なシステム活用につながります。
第7章 レガシー刷新を支える開発基盤を選ぶポイント
リライトやリビルドによってシステムを再構築する場合は、どの開発基盤を利用するかも重要です。
開発期間を短縮できることだけでなく、現行資産を活用できるか、個別の業務要件に対応できるか、刷新後も保守・改善を続けやすいかといった観点から選ぶ必要があります。
特に、刷新したシステムが再びブラックボックス化・属人化しないよう、長期運用まで見据えて検討することが大切です。
現行資産を活用しながら再構築できるか
レガシー刷新では、現行システムのすべてを作り直す必要があるとは限りません。
既存のデータベースや業務ルール、外部システムとの連携など、今後も利用できる資産を活用できれば、刷新に必要な期間や負担を抑えられる場合があります。
そのため、既存データベースやデータ構造を利用できるか、現在のシステム資産とどのように接続できるかを確認しておくことが重要です。
段階的な再構築や外部システムとの連携に対応できるか
大規模なシステムでは、すべての機能を一度に切り替えるのではなく、業務や機能ごとに段階的に再構築するケースが見受けられます。その場合、新旧システムを一定期間併用したり、既存システムと新しいシステムの間でデータを連携したりする必要があります。
既存システムとの接続に加え、APIなどを利用してクラウドサービスや周辺システムと柔軟に連携できることは、段階的な刷新や将来のシステム拡張を進めるうえで重要な条件です。
個別の業務要件に柔軟に対応できるか
基幹システムなどを刷新する場合、企業独自の業務ルールや複雑な処理に対応しなければならないことがあります。
標準的な機能だけでは対応できない場合に、必要な処理を追加・拡張できるかを確認しましょう。
一方で、個別開発を増やしすぎると、再びシステムが複雑化する原因になります。標準的な機能や部品を活用しながら、必要な部分だけを拡張できることが重要です。
開発方法と品質を標準化できるか
システムを新しくしても、担当者ごとに設計や実装の方法が異なれば、時間の経過とともにシステムが複雑化・属人化する可能性があります。
画面や処理の作り方、開発ルール、共通部品などを統一し、担当者が変わっても一定の方法で開発・保守できる仕組みが必要です。
開発基盤を選ぶ際には、開発を効率化できるかだけでなく、品質や開発方法を継続的に標準化できるかも確認しましょう。
仕様や変更の影響範囲を把握できるか
刷新後のシステムも、業務や制度の変化に合わせて改修を重ねていきます。
そのため、仕様書や設計情報を継続的に維持できることや、変更する項目・テーブル・プログラムがどこで利用されているかを確認できることも重要です。
改修時に仕様や影響範囲を把握できる状態を保つことで、調査にかかる負担を減らし、ブラックボックス化や改修時の見落としを防ぎやすくなります。
刷新後も長期的に運用・改善できるか
レガシー刷新では、新しいシステムの稼働だけでなく、その後の10年、20年といった運用も見据える必要があります。
開発基盤そのものを長期間利用できるか、バージョンアップや技術環境の変化に対応できるか、稼働後の保守・改善を支援する仕組みがあるかを確認することが重要です。
開発時の効率だけでなく、将来の改修しやすさや属人化の防止まで考えて開発基盤を選ぶことが、再レガシー化を防ぐことにつながります。
楽々Framework3を活用したレガシー刷新
楽々Framework3は、既存データなどの資産を活用しながら、業務システムを新しいWebシステムとしてリライト・リビルドする際に利用できるローコード開発基盤です。
楽々Framework3では、画面構成や処理の流れなどをまとめた1,000種類以上の開発部品を活用することで、開発方法や品質の標準化を支援します。
開発者のスキルや経験によるばらつきを抑えながら、必要に応じて個別の業務要件にも対応でき、システム稼働後の保守・改善まで見据えた開発が可能です。
楽々Framework3を活用した具体的な再構築方法については、開発シーン「モダナイゼーション」で紹介しています。
また、刷新後のシステムを自社主体で継続的に改善していく場合には、開発基盤だけでなく、内製化する範囲や体制、品質を維持する仕組みを整えることも重要です。
第8章 まとめ
レガシー刷新は、古くなったシステムを新しく置き換えるだけではなく、現在の課題を整理し、将来の業務や事業の変化に対応しやすいシステムへ見直す取り組みです。
刷新を進める際は、現行システムや業務を十分に調査したうえで、自社の課題や目的に合った刷新手法を選ぶことが重要です。また、対象範囲や優先順位を整理し、必要に応じて段階的に進めることで、移行によるリスクを抑えられます。
さらに、新しいシステムが再び複雑化・属人化しないよう、開発方法の標準化や仕様・設計情報の維持、刷新後の保守・改善まで見据えて取り組むことが大切です。
執筆者:平河 拓郎
住友電工情報システム株式会社
ビジネスソリューション事業本部 第一システム開発部
シニアマネージャー シニア・テクニカル・コンサルタント