DIC株式会社

DIC株式会社

データモデリング×ローコード基盤で高速開発を実践
国内外43社を包括するグローバルプラットフォームを確立し、急増する業務に対応

世界62の国と地域に163のグループ会社を展開する化学メーカーのDIC株式会社(以下、DIC)は、自社製品などの化学物質情報を管理する専用システム「CIGNAS(シグナス)」を開発パートナーである株式会社アイティーエス(以下、アイティーエス)の支援を受けて運用している。CIGNASの開発基盤には、データモデリングとの親和性が高いローコード開発基盤「楽々Framework3」を採用している。アイティーエスは、その特性と、得意とするデータモデリングの知見を活かし、CIGNASの迅速な開発・機能拡張を支援してきた。これにより、DICはグループ内で有数の大規模グローバルプラットフォームを確立し、近年急増している化学物質管理業務の大幅な効率化に成功している。

化学メーカーに必須の「化学物質情報管理」
複数チームを組成し、プロジェクトを始動

印刷インキや有機顔料で世界トップクラスのシェアを誇る化学メーカーのDIC。1908年の創業以来、「彩り」と「快適」を提供価値に高度な技術力と製品力を磨き上げてきた。現在は世界62の国と地域に163のグループ会社を展開し、グローバルな事業基盤を築いている。2022年に発表した長期経営計画「DIC Vision 2030」では、「グリーン」、「デジタル」、「QOL (Quality of Life)」を注力領域に定め、多彩な基盤技術の組み合わせによる新事業・新製品の創出を目標に掲げている。

グローバルに事業を展開し、多彩かつ安定した事業ポートフォリオを誇るDICだが、そうした強みを有するからこその課題も存在する。その一つが化学物質情報管理である。化学メーカーにとって極めて重要なこの業務について、DICのレスポンシブルケア部グループマネジャーの井上雅人氏は次のように説明する。

「化学物質情報とは自社の製品や利用した原材料に、どのような化学物質が、どのくらい含まれているか、その危険有害性、正しい取り扱い方法といった情報のことです。化学メーカーだけでなく、化学物質を含む部品を扱う企業など、製造業のサプライチェーン全体で伝達・管理されます。化学物質は取り扱いを誤ると火災や爆発、中毒被害などの事故の要因になるため、その情報を各国の法令に基づいて正確に記録し、取引先などに提供しなければいけません。しかし、当社の場合、製品 数が数十万点に及ぶなど製品ラインナップが膨大であり、かつ多様な国や地域でビジネスを展開しているため、それぞれの国の法令に準拠して管理業務を行う必要があります。さらに、近年では、顧客から個別の調査依頼が急増し、ここ5年ほどで化学物質情報の管理業務は4~6倍に増加しました。この煩雑かつ厳密さの求められる業務を個人単位や事業所単位で管理したり、Excelなどの汎用的なツールで処理したりするのは現実的ではありません。そのため、当社では2002年頃から専用の化学物質情報管理システムを導入し、継続的にブラッシュアップしてきました」(井上氏)。

DICは2002年頃から化学物質情報の管理業務をシステム化し、2009年からは開発パートナーであるアイティーエスと連携し、国内向けのフルスクラッチシステム「CIRIUS(シリウス)」を運用していた。しかし、2010年代以降、事業のグローバル化が進むにつれて、国内外のグループを包括する管理体制が求められるようになっていった。

パッケージ×独自開発でシステムを構想
アイティーエスの強みを活かした高速開発

グローバルな化学物質情報管理システムを構築するうえで、DICはパッケージソフトと独自開発を組み合わせたプラットフォームを構想した。先述の通り、化学物質情報管理は各国の法令に基づかなければいけない。しかし、フルスクラッチで数十カ国の法規制に対応するロジックを構築・維持するのは困難であるため、法規制への対応には欧米でも実績のある化学物質情報管理のパッケージソフトを活用することにした。その一方で、DIC独自のセキュリティ要件や情報管理に対応するには、 独自開発も必要になる。そこで、DICはパッケージソフトで化学物質情報管理の基本業務をカバーし、その他のDIC独自の業務や要件には、独自開発で対応することに決めた。

化学物質情報管理システムにおけるパッケージソフトと独自開発の組み
合わせ。要求事項ごとに、パッケージソフトと独自開発を使い分けた。

この際、独自開発機能の開発基盤には楽々Framework3が採用された。その開発を担ったのが、以前より開発パートナーとして参画していたアイティーエスだ。アイティーエスはデータモデリングを軸とした高精度かつスピーディな開発が強み。さらに楽々Framework3を前身製品(楽々FrameworkII)の時代から25年以上にわたって活用してきた実績も有している。その知見はDICの開発でも力を発揮した。そのポイントについて、アイティーエスのシステム開発セクションのプロジェクトリーダーである寺口あゆみ氏はこう解説する。

「開発のポイントは、データモデルと楽々Framework3のシームレスな連携です。上流工程で可視化したデータモデルをもとに、楽々Framework3の統合環境である「RakStudio」で画面遷移などの基本構造を自動生成しました。さらに、楽々Framework3にはGUIで設定可能な画面コンポーネントがあらかじめ多数用意されています。これを用いてパラメータドリブン(設定値で挙動を制御する方式)なロジック実装を行い、開発の生産性向上を図っています。この仕組みにより、設計と実装の乖離を最小限に抑えながら、高速かつ高品質な開発を実現しました」(寺口氏)。

こうした開発によって、CIGNASの独自開発機能を担う「CIRIUS-Lite(シリウス ライト)」が構築された。メイン画面プログラムは110本で、約600画面に相当する。そのほか、サブ画面プログラム90本、バッチプログラム150本を開発し、大規模なシステムを効率的に作り上げていった。

国内外43社へ展開、グループ屈指のシステムに
業務4~6倍増でも、人員増は約2倍に抑制

2021年、DICはパッケージソフトと独自開発システムを組み合わせたプラットフォームCIGNASをリリースした。CIGNASは、アイティーエスが楽々Framework3で独自開発したCIRIUS-Liteとパッケージソフトで構成される。さらに、CIGNASは基幹システムやワークフローなどの他の業務システムとも連携し、化学物質情報管理の前後工程とも連動している。

CIGNASのシステム構成。独自開発システムとパッケージソフトで構成され、
さらに基幹システムをはじめ数多くの主要なシステムと連携が図られている。
*SDS:化学物質の危険性や有害性、取り扱い方法などの情報を記載した「安全データシート(Safety Data Sheet)」のこと。

当初、CIGNASは日本で先行リリースしたが、その後、2023年に中国地域、翌年には東南アジアなどのアジアパシフィック地域へと段階的に展開していった。さらに、システムの導入後には、継続的な改修や改善にも取り組んでいるとDICの井上氏は強調する。

「各国への導入後には、管理部門、ユーザ部門、情報システム部門の三者で構成されるワーキンググループが主導して、継続的な改善活動を展開しています。具体的には、定期的に会議を開き、各国や各部門から集約した改善提案などを検討して、業務プロセスの見直しやシステムの改修を推進しています。『作りっぱなし』にせず、改善のサイクルを継続的に回すことで、システムの陳腐化を防止しています」(井上氏)。

こうした地道な活動を通じて、DICはCIGNASの導入範囲をグローバルに拡大。現在、CIGNASは国内外の43社で利用されており、利用会社数ベースで、グループ内で有数の大規模システムに成長した。これにより、DICでは、この5年間で4~6倍に急増した化学物質情報管理の業務に対し、5年前の約2倍の人員で対応している。

成功のカギは「GUIとプラグイン開発の使い分け」
今後は未導入地域への展開を推進

今回の開発を振り返って、アイティーエスの寺口氏は「楽々Framework3の特性を最大限に活かした開発が成功のポイントでした」と話す。

「もともと当社は楽々Framework3の前身の製品である楽々FrameworkIIを利用していたため、プラグイン開発のノウハウを数多く有していました。CIGNASのもとになったCIRIUSも楽々FrameworkIIで作成していたことから、CIRIUSのデータモデルを楽々Framework3に親和性が高い形で取り込むことができました。それに加えて、楽々Framework3ではGUIによるロジック設定が容易です。そのため、プラグイン開発とロジック設定を使い分けることで、コーディングの手間を極力減らし、効率的に開発を実現できました。効率的な開発は、当社だけでなく、ユーザであるDIC様にとってもメリットが大きいです。楽々Framework3は両者にとってWIN-WINなプロジェクトを可能にしてくれました」(寺口氏)。

今後、CIGNASはバングラデシュなど未導入のエリアへの展開が予定されている。さらに、導入後に確立した改善のサイクルを回しながら、業務プロセスの見直しやシステム改修にも取り組んでいく。こうした改善活動と海外展開を支える開発基盤として、楽々Framework3は今後も重要な役割を担っていく。

DIC 株式会社
レスポンシブルケア部
グループマネジャー
井上 雅人 氏
株式会社アイティーエス
システム開発セクション
プロジェクトリーダー
寺口 あゆみ 氏
DIC株式会社様のホームページ
  • 本事例中に記載の組織名や肩書、数値、固有名詞等は「楽々イノベーション・フォーラム 2026」(2026年7月)講演時点の情報です。

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