シャープ株式会社

シャープ株式会社

18,000人規模の全社一斉導入を7ヶ月で実現

電子決裁システム導入事例。
経営トップ層を含め、導入ユーザ数は約18,000名。
大規模な電子決裁システムの全社一斉導入を、七ヶ月間で実現。

1912年に創業、社名の由来である「シャープペンシル」の開発でも知られるシャープ株式会社(以下、シャープ)は、日本を代表するエレクトロニクス機器、電子部品のメーカーであり、液晶パネル、携帯電話、家電製品、太陽電池パネルなどの分野で、常に新しい分野を切り開き、業界をリードしてきた会社である。

「なぜシャープには、電子決裁システムが導入されていないのか?」2012年4月シャープの経営幹部より上がった声から、本システム導入に向けての検討はスタートした。

電子決裁システム導入の「3つの壁」

シャープでは、過去に電子決裁システムの導入を何度か検討していたが導入には至っていなかった。導入の障壁となる大きな「3つの壁」があると考えられていたためである。

  1. 電子決裁システムを経営幹部に使っていただけるかどうかという不安があったこと。
  2. 全社的に業務規定に定められた回付ルールがあるにも関わらず、本部・部門毎に独自の回付ルールが存在し、それぞれのルールが複雑でシステム化が困難と思われていたこと。
  3. 組織が多く組織変更の頻度も高いため、決裁書の回付が滞る心配や、組織変更対応に相当な工数がかかると思われたこと。

しかし当時の経営状況もあり、現状を変えるという経営幹部の危機感と強い意思から、具体的な導入検討を進めることとなった。

電子決裁システム導入の狙いと想定効果

電子決裁システム導入の狙いは、「決裁書回付期間の短縮」、「プロセスの標準化」、「間接業務の生産性向上」の3点である。

導入効果を試算したところ、決裁書回付期間については、現状平均11日間かかっているところを、書類の受渡の時間を必要とせず、並列で回付できることから平均6日間に短縮できる見込みが得られた。

間接業務の削減効果については現状1申請あたり平均14時間かかるところを回付作業時間、回付状況確認/問合せ対応時間の削減が見込めるため、1申請あたり平均9.5時間に短縮できる見込みとなり、月2,000件として社内申請全体では月あたり約60人月程の削減効果が期待できる試算結果となった。

間接業務における想定効果

決裁書電子化による見える化と標準化したフローで回付
→決裁申請・承認にかかる間接作業時間の削減(約25%を削減)

このように、電子決裁システム導入による大きな効果が得られることが明確となり、シャープにおける構造改革を目指し本格的にプロジェクトがスタートすることとなった。

スケジュールの設定とパッケージ選定

前述の通り、構造改革を実現するためのプロジェクトとして、早期での導入を必達目標とし、2012年5月にプロジェクトを開始して、2012年12月導入という工期七ヶ月のスケジュールを策定した。

全体スケジュール 2012年12月導入が必達目標

一般社員から経営幹部までを含めた、導入ユーザ数約18,000名の大規模なシステムとなるため、本番開始時の業務の混乱を避けるには十分な教育と体制が必要との判断から、教育、導入準備期間として約二ヶ月を設定すると、システム開発にかけることができる期間は二ヶ月程しかないことが明らかとなった。

全社一斉導入、海外も含めたシャープグループ全体への展開、拡張開発も必要であることから、実績のある電子申請ワークフローパッケージの導入による短期間でのプロジェクト成功を目指すことになり、まずは今回の電子決裁システムで実現すべき機能・要件の洗い出しを行った。

(1)電子決裁申請・承認画面

  • 経営幹部から一般社員まで、全社員が違和感なく紙から電子申請へ移行できるように、現行決裁書の画面イメージをそのまま電子決裁画面に落とし込めること。
  • 担当者の決裁書作成、確認作業を軽減するため、記入内容を具体的に項目化できること。

(2)回付フロー

  • 回付基準を全社で標準化できるよう、回付ルートが自動設定できること。
  • 約4,000パターンある回付ルートをマスタ化し、さらに各部門が独自で運用している部内回付ルールを取り込めること。
  • 組織変更・人事異動時にも自動化対応できること。

(3)シャープ関連会社(国内・海外)への展開

  • 海外環境での利用も見据え「英語・中国語」にも対応できること。
  • 各社要件に柔軟に対応可能とするため、ベンダーに依存しない「自由なアドオン開発」が可能であること。

上記に加え、「システム運用」と「製品サポート」の観点を追加しパッケージの評価基準を設定した。
9社のパッケージを評価した結果、ほぼすべての評価基準を満たし、開発、導入にかなりのスピード感が期待できる楽々WorkflowII(以下、楽々WF)を採用することとなった。

短期間で期待通りの生産性

楽々WorkflowⅡ・楽々FrameworkⅡ導入イメージ

2012年7月から楽々WFとWebアプリケーション開発基盤「楽々FrameworkII」(以下、楽々FW)を使用し、楽々WF・楽々FWの標準機能の利用と、楽々FWによるアドオンの開発を実施することで、予定通り二ヶ月で開発をほぼ完了することができた。

楽々WF・楽々FWを使った開発は事前の予想通り効率よく行うことができ、開発者からも使って良かった、便利だったとの声が多かった。

「柔軟なフォーム設計」
Excelでフォーム設計可能で、複雑な画面要件でも効率良く対応。

「印影オプションやフローの自動連携」
今回の要件にフィットし、開発工数の短縮に寄与。

「充実した楽々WF・楽々FWの標準機能」
標準機能が充実しAPIも豊富だったので、今回のように組織規模が大きく回付ルートが複雑であっても、独自の作り込みにより回付ルートを自動設定できた。

「組織変更時の対応」
作り込みによる自動洗替処理と楽々WF・楽々FW標準の組織変更機能により自動化を実現。

「アドオンの高い開発生産性」
部品の活用やウィザード形式での画面開発により効率的な開発が可能であった。

「課題発生時のサポート」
Webサポートとオンサイトサポートの活用により、思いのほか素早く課題解決できた。

逆に苦労した点もいくつかあった。例えば、具体的な要件を楽々WF・楽々FWで実装するためには、楽々WF・楽々FWのどの標準機能を利用し、どの機能をアドオンにするか、またアドオンでの実現方法はどうするか、について検討するフェーズに意外と時間がかかってしまう点だ。加えて、約650もあるAPIのどれを実装すべきかの選択に迷ってしまい各アドオン処理で使用するAPIの検証作業に多くの時間をかける結果となった。

このように、苦労した部分もいくつかあったが、当初の予定通り二ヶ月という短期間で開発を終えることができたのは、やはり楽々WF・楽々FWの開発効率の良さに加え、住友電工情報システムのWeb上、オンサイトでのサポートが充実していたことが大きかった。サポートに問い合わせた内容にはかなりの無理難題もあったはずであるが、充実したサポートのおかげで乗り越えられた。

電子決裁システム導入の大きな成果

それでは本番導入後の効果はどうだっただろうか。

回付期間については、想定よりさらに1日短縮し、平均5日間での回付が可能となった。また、間接業務削減については、想定にはやや届かなかったものの、1申請あたり約3.5時間(約20%)、月2,000件として月間約47人月の削減効果と、ほぼ期待通りの成果を達成することができた。

電子決裁システム導入後、それぞれの立場の方々から喜びの声をたくさんいただいた。

【起案者】

  • 過去の申請をコピーして類似申請を簡単に登録できるので、起案作成にかかる時間が短縮できた。
  • 決裁書の回付状況が一目で分かるようになった。

【承認者、決裁者】

  • 決裁書の確認項目がはっきりしていて確認しやすい。
  • 紙回覧の時は机上が回覧書類であふれていたが、それが無くなってすっきりした。
  • 出張先でも確認、決裁できるのが良い。

さらには、回付先の設定が決裁書の内容で自動判別されればさらに良い、添付資料の確認がもっと楽になれば良い、回付先の追加設定が難しいなどの新たな改善要望もいただいた。

今回のシステム導入は数値的な効果が大きく、現場から経営幹部まで含めたユーザからの好評価もあり大成功であったと実感している。

写真:コーポレート統括本部
ITシステム戦略部経理システム
プロジェクトチーム チーフ
多田 昌弘 氏

当初不安だった「3つの壁」についても、現行申請フォームを完璧に再現し、利用者にとって違和感のない画面作成を行ったこと、捺印欄の部門名称自動表示や、代理承認時の代理表示、決裁後の捺印表示など経営幹部の方への電子決裁システム利用促進に対応できたこと、回付ルート設定及び、回付開始前のチェック機能を実装した自動回付ルート設定機能の構築、組織変更に対応するための基幹システムマスタ連携に加え、自動洗替機能を構築できたことなどもあり、無事に解決することができた。

開発時における課題、問題については、サポートを効果的に活用することによりほぼ解決することができた。特にオンサイトサポートは課題、問題の解決には必須だと感じている。

二ヶ月での開発で苦労も多々あったが、楽々WFを利用したからこそ、今回のシステム要件をクリアし、導入成功へと導けたと実感している。

今後の展望

今後は、関連会社への展開、他システムとの連携、文書管理システムの導入等と電子決裁システムの機能拡張を計画し、更なる間接業務の削減を進めていく予定である。

取材 2013年7月

※本事例中に記載の社名や肩書き、数値、固有名詞等は取材時点の情報です。

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